夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「恋愛の話に参加出来ない所為(せい)か、女友達より男友達とつるむことが多かったんです。趣味も男子寄りですし」
 「成る程ね。でも、特定の男子と仲良くするなら兔も角(ともかく)、不特定多数の男子とつるむぐらいなら問題ないんじゃない?それとももしかして、その事で女子に睨まれたとか?」
 「いえ、わたしが恋愛に無頓着なことは、女友達は皆知ってましたから、そんなことは無かったです。しかし、わたしは少し―いえ、大分と無頓着過ぎたようです」
 「というと?」
 「男友達の中に、とても話の合うダイくんという男の子がいました。ある時、わたしが次の休みに映画に観に行くと言ったら、ダイくんも丁度観るところだと言い、その場の流れで二人で観に行くことになったのです。仲の良い友達と映画に行くだけ。わたしはそう思っていました」
 「でも、ダイくんの方はそうじゃなかった」
 「そうみたいです。ダイくんは、映画を観てる時にわたしの手を握ってきました。わたしはどうしたのかと思って、普通に『何?』と聞いてしまいました」
 「成る程。ダイくんはさぞ驚いただろうね」
 「ええ。とても戸惑っていました」
 「だろうね。嫌われるかも知れないと思いながらも、勇気を振り絞った行動だっただろうし」
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