夜明けのコーヒーには 早すぎる
 突然思い出したことに戸惑い、眼を見開いたまま、固まってしまう。
 「ユラさん?どうしたのですか」
 カドカワとヒロコは、固まったままのユラを見つめる。
 ユラはハッとして、「い、いえ。すみません。急に思い出したものですから」と言って、ちょこんと頭を下げた。
 「ふむ」ヒロコはお猪口を空ける。「何を思い出したの?差し障りなければ、教えて」
 「ヒ、ヒロコ。それは流石に踏み込み過ぎでは―」
 と言うカドカワを、「いいんです。カドカワさん」と遮り、ユラは思い出したことを話し出した。
 「映画館のことがあった数日後、ダイくんが通り魔に襲われるという事件が起こったのです。幸い、軽傷で済んだのですが、頭を殴られたということで、検査入院をすることになったのです」
 「物騒な話だねー。犯人は捕まったの?」
 「いえ、後ろから殴られたらしく、ダイくんは犯人の顔を見なかったようです。それよりも、少し気になることがあったのですが―」
 「気になること、ですか」
 「はい。ダイくんが襲われたのが、わたしの家の近所だったのです」
 「近所でダイさんが襲われたことが気になるということは、ダイさんの住所は全く別の場所。―ということですね」
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