夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「どういうこと?カドちゃん」
 「飽くまでぼくの想像ですが、ダイさんはユラさんにストーキング紛いのことをしていたのではないでしょうか?」
 「ダイくんが、ですか?しかし、そんな記憶はないのですが」
 「ええ。それもその筈。何故なら、ダイさんは本格的にストーキングをする前に通り魔に襲われたのですから」
 「では、わたしの家の近くで襲われたのは、ストーキングをしていたからだと?」
 「そういうことです」
 「ちょっと待って、カドちゃん」
 「何ですか?ヒロコ」
 「仮にダイくんが、ストーキングの途中で通り魔に襲われたとして、それ以降ストーキングしなかったのは何故?通り魔に襲われたとはいえ、ダイくんがストーキングを止める理由にはならないと思うけど」
 「それは―」カドカワは、ちらりと横目でユラを見る。「言いにくいですが、ダイさんは恐らく、ユラさんに襲われたと勘違いしたのでしょう」
 「わたしが、ですか?」
 「ええ。ダイさんは少々、思い込みの激しい方だったみたいですから」
 「付き纏(まと)ったという後ろめたさから、ダイくんは勘違いをしたって訳か」
 ヒロコは手酌でお猪口に日本酒を注いだ。
 「飽くまで想像ですけど、ね。順を追って説明すると、こうです」
< 147 / 200 >

この作品をシェア

pagetop