夜明けのコーヒーには 早すぎる
 ぼくとヒロコの間のルールで、呑み代は交代で支払うことになっている。そして今日は、ぼくの番だ。
 支払いを済まして、ヒロコの住むアパートに向かう。途中でつまみと酒を買い足し、ヒロコのアパートに到着した。
 飾りっけの無い片付いた部屋が、ぼくとヒロコを迎える。見慣れた部屋に、愛着さえ覚えるぼくは厚かましいだろうか?
 詮もないことを考えながら、ぼくは奥の部屋の炬燵机に買ってきたものを並べた。
 「悪いけど、わたしシャワー浴びるわ」
 ヒロコはバスタオル片手にそう言って、浴室に入っていった。
 「はい。ぼくも後でいいですか?」
 「もちよー」
 浴室からヒロコが言った。
 ぼくはヒロコがシャワーを浴びている間に、買ってきた物を冷蔵庫に入れたりして時間を潰した。

 「ふーさっぱりしたー」
 ヒロコが頭にタオルを巻いて、浴室から出てくる。
 ぼくは、ヒロコの部屋に常備してある自分の着替えを持って、入れ替わりに浴室に入った。
 熱いシャワーを浴びて、少しだけ酔いが冷める。
 「はーすっきりしました」
 ぼくがタオルで頭を拭きながら浴室を出ると、ヒロコは既にビールを呑んでいた。
 ビール党でないぼくには解らないが、ビール好きには風呂上がりのビールが最高の贅沢らしい。
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