夜明けのコーヒーには 早すぎる
それも放っておくことにした。そしたら、どうもトイレを我慢してたらしく、足早にトイレに向かっていったのよ。今思えば、恥ずかしかったのか照れていたのか。まあ、どっちも同じようなもんだけど。とにかく、その友達がトイレに立った時、何だか知らないけど、わたしの中に悪戯心が湧いたの。それで、その友達の空のグラスに、わたしのグラスのビールをそのまま流し入れたって訳」
 「成る程。交換というよりは、自分のグラスの中身を相手に押し付けた形ですね。しかし、自分の空のグラスにビールが入っていたら、その友達も変に思って、ばれると思うのですが?」
 「わたしもそう思ってね。冷蔵庫から新しく缶ビールを取り出して、中身を流しに半分ほど捨てといたんだ。そして、それをさも注ぎましたって感じに、軽く掲げて見せたって訳」
 「成る程。納得しました。トイレから戻ったその友達とやらは、リョウコさんのビールを飲んだ後に、眠ってしまった、と」
 「そう、なるね」リョウコさんは首を傾げる。「でも、それがどうかしたの?」
 「何か気になることでもあるの?カドちゃん」
 「ええ」ぼくは頷き、お猪口を傾ける。「ぼくの考え過ぎかも知れませんが、その友達とやらは、
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