夜明けのコーヒーには 早すぎる
二人きりだというなら、解らなくもないけど。―と言っても、考えるのもおぞましいけど、ね」
 「それは色々と考えられますが、ろくでもないことは確かでしょう。それに、馬鹿彼氏が帰ってこなかったところからみて、睡眠薬は彼が友達に渡したものだと考えられます」
 「あいつ、が?」
 「ええ。しつこく呑みに誘っておきながら、一向に帰ってこなかったのは、全て彼が仕組んだことだからでしょう。リョウコさんと別れる為に―」
 「えっ!」ヒロコとリョウコさんの声が重なる。「どういうこと?カドカワさん。別れる為って言ったって、もう別れているような状態なのに」
 「恐らくは矜持(きょうじ)の為です」
 「矜持(きょうじ)?」
 「ええ。彼のくだらないプライドが、彼に短絡的で愚かな行動をさせたのでしょう」
 「どういうことなの?カドちゃん」
 「順を追って説明しますと、彼の計画はこうです。先ず、リョウコさんを呼び出して、自分と自分の友人との三人で呑む。次に、自分は買い出しに行くと言って外に出る。恐らく、この口実を作る為に、前以(まえもっ)て酒と肴(さかな)を少なめに用意していたのでしょう。そして、友人がリョウコさんに睡眠薬を盛り、
< 164 / 200 >

この作品をシェア

pagetop