夜明けのコーヒーには 早すぎる
リョウコさんが眠ったら、不義の証拠を捏造する」ぼくは日本酒をチビリ。「恐らくは、こんなところでしょう」
 「そんな―」
 リョウコさんの顔が青ざめていくのが判る。無理もない。想像したくもないが、恐らくはリョウコさんが考えているようなことになっていたかも知れないのだから。
 「でも、何故、その馬鹿はそんなことをしたの?互いに冷めきっているっていうのに」
 「恐らく、先も言った矜持(きょうじ)の為です。彼が最初の別れ話を受け入れなかったのは、自分が振られるということが、酷く恥ずかしく思えたからでしょう。半分は―」
 「半分?」
 「もう半分は、ヒロコも言ってたように懸想相手に振られた時の保険だと思います。彼女がいない状態を恥てでもいたのでしょう。そんな体裁を繕(つくろ)っても、何の意味も価値もないのに、です」
 「ちっ」ヒロコは舌打ちをして、日本酒を呷った。「胸糞悪い奴だな」
 「全くです」ぼくは頷く。「彼がこんなことを計画したのは、恐らく懸想相手といい仲になったからだと思われます」
 「というと?」
 「つまり、保険だったリョウコさんには、用がなくなってしまったという訳です。本来ならば、別れ話を切り出していたのでしょうが、
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