夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「どうしました?」
 「あっ、いやっ、この間、久し振りにリョウコから電話があって、ね」
 「それは―」ぼくは日本酒をチビリ。「偶然とはいえ、不思議なこともあるもんですね」
 「だね。電話がくる前日に、リョウコのことを含めた大学時代のことを思い出しちゃったから―」
 「そうですね」
 ぼくは頷いた。リョウコさんのことを思い出したのは、ユラさんにぼくとヒロコが出会った経緯を説明した時だ。勿論、ユラさんに事細かく話す訳にはいかなかったが―
 「それで―」ぼくはタコわさをぱくり。「リョウコさんは元気でしたか?」
 「うん。元気そうだったよ」ヒロコは日本酒をチビリ。「それでね。今度、リョウコが一緒に呑みたいって言ってた」
 「それは良かった。楽しんできて下さい」
 「そのことなんだけど―」
 ヒロコは、ぼくの方をちらりと見る。
 「どうしました?」
 「リョウコが、カドちゃんも一緒にって」
 「えっ?いいんですか?ぼくなんかがいて。リョウコさんとは、一回生の時に何回か呑んだだけですけど―」
 「そうなんだよね。斯(か)く言うわたしも、同じようなもんだし。何か困ったことでもあるのかな?」
< 169 / 200 >

この作品をシェア

pagetop