夜明けのコーヒーには 早すぎる
その為、ぼくとヒロコとは疎遠になっていったと記憶している。その時の彼氏が、今の旦那さんという訳だ。卒業後、風の便りに妊娠して籍を入れたとは聞いていたが、まさか今になって再び呑むことになろうとは―。これも、合縁奇縁というべきか。ぼくの人生も、意外と退屈しないものだな。
 ぼくは日本酒を呷った。

 リョウコさんとは、週末の土曜日に呑むことになった。場所は『ロンド』、時間は夕方から―ということらしい。旦那さんに娘さんを任せるとなると、週末以外は無理というものだろう。ぼくは二つ返事で、ヒロコに了承の意を伝えた。
 そして週末の土曜日、ぼくは「ロンド」へとやって来た。
時間はいつもと変わらないが、今日は予約を入れてある。この時間、週末ということもあって、割と込むからだ。備えあれば憂いなしというやつである。
 『ロンド』へ入ったぼくは、予約席へと案内される。どうやら、他の二人はまだのようだ。ぼくは奥の席に胡座(あぐら)をかくと、お絞りで手を拭きながら、壁のメニューを眺めた。
 暫くメニューを眺めていると、店員さんに案内されて、リョウコさんがやって来る。久し振りに会った彼女は、大学生の時よりも少しふくよかになっていた。
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