夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「なら、安心だね」ヒロコはほっけを摘まむ。「問題は、旦那がどうして土産を頻繁に買ってくるようになったか、だ」
 「やっぱり、わたしに何か後ろめたいことがあるのよね」
 リョウコさんは嘆息して、日本酒を呷った。
 「その可能性は高いかも知れませんが、即断は禁物です。他に、何か変わった所はありませんか?」
 「そうねえ。そういえば、最近になって、妙にわたしを褒めるようになった。最初は悪い気はしなかったんだけど、何だか褒められ過ぎると、わたしに黙って何かしてるんじゃないかって気がしてきちゃって、ね」
 「確かに、いきなり褒められると、少し身構えてしまうね」
 「そうですね。何か、リョウコさんに隠し事があるという可能性は高いですね」
 「やっぱり浮気かしら」
 「それは判りませんが、リョウコさんには言えないことでしょう」
 「でも、まだ他の女性と関係を持っているって決まった訳じゃないし、ね」
 「そうなんだけど、ね。この頃、妙にそわそわして、落ち着かない所があるんだ。うちの旦那」
 「そわそわ、ですか」
 「うーん。益々嫌疑が深まってきたなー」
 「やっぱり、浮気だよね」リョウコさんは、自嘲気味な笑みを口許に浮かべる。
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