夜明けのコーヒーには 早すぎる
 今回の事を、頭の中でまとめてみることにした。
 先ず、T氏に借りがあるY嬢とK氏は、ヒロコを紹介することで借りを返そうとする。
 Y嬢の強引な誘いも、ヒロコが来ないとY嬢が困るからだ。
 嫌な想像だが、もし仮にヒロコが約束をすっぽかしたら、全てをヒロコの責任にしてT氏を納得させたのだろう。
 そして、ベタベタの恋愛映画と当日のY嬢とK氏のイチャ付きは、否応なしにT氏とヒロコをくっつけようとしている。更には、T氏の異様なまでの映画知識。安易な想像と偏見が得意なT氏を、Y嬢が唆(そそのか)して言わせたのだろう。
 Y嬢の誤算は、ヒロコが恋愛映画に興味がなく、言いたいことをはっきりと言う人間だったということ。
 最後に、何とかしようと呑みに行こうとしたようだが残念。T氏は従順でないヒロコに愛想を尽かして、帰ってしまったというわけだ。

 ぼくはコーヒーを啜った。
 程好い苦味が、ぼくの心を落ち着かせる。
 少し突飛過ぎるかな?ぼくの頭をそんな言葉が過(よぎ)る。
 そうかもしれない。ぼくはそう自問自答をしながらも、自分の仮説の正しさを確信していた。
 理由はたった一つ。
 Y嬢がヒロコをT氏に紹介したこと。
それだけだ。
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