夜明けのコーヒーには 早すぎる
わたしは、彼と結婚して正解だったと思ったわ。ほら、よく言うでしょ、好きな人より、自分を好きでいてくれる人と結婚しろって。あれって名言よね。実際に結婚してみて、よく解ったわ。といっても、彼のことが嫌いとかっていうんじゃなくて、勿論好きよ。でも、彼を好きな一番の理由は、わたしを好いていてくれているってことなの」
 リョウコさんは日本酒を呷った。目尻から流れる、一筋の雫が、リョウコさんの頬を濡らしていた。
 「それで、もし旦那が浮気しているとして、どうするつもりなの?」
 リョウコさんは頭(かぶり)を振る。「解らない。リカがいるから、別れることはしない。でも、割り切って平気な振りをするのも無理」リョウコさんは嘆息する。「どうしよう―」リョウコは、呟くように言った。
 「酷なようだけど、わたしたちには何も出来ない。夫婦の問題だから。一度、ゆっくりと旦那と話し合うべきだと思う」
 「そう、だよね」リョウコさんは、口許に自嘲気味な笑みを浮かべる。「実はね。勝手な話なんだけど、カドカワさんかヒロコが、浮気を否定してくれたらなあと、少し期待してたんだ」
 「リョウコさん―」
 「ごめんね。嫌な友達だよね。こんなどうしようもない愚痴、聞かせちゃって。
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