夜明けのコーヒーには 早すぎる
この仮説は、リョウコさんの旦那さんが浮気をしていないという前提でのみ、成り立つのだ。つまり、この仮説を証明出来るのは、夫婦の愛だけということになる。
 ぼくは、言うべきかどうか少し迷ったが、取り敢えず言ってみることにした。
 「リョウコさん。結婚記念日はいつですか?」
 「えっ?」リョウコさんは顔を上げる。眼が赤い。「明日、だけど―」
 「そうですか。もし、リョウコさんが旦那さんを信じることが出来るのなら、浮気を否定出来るかも知れません」
 「えっ!」
 リョウコさんとヒロコは、暫し茫然とした後、「いっ、一体どういうこと!」リョウコさんは身を乗り出して言った。ぼくの眼の前に顔がある。
 「言った通りです」ぼくは日本酒をチビリ。「全ては明日解ることですが、ぼくの仮説を聞きますか?」
 「お願いします」リョウコさんは、ちょこんと頭を下げる。「どういうことか、聞かせて」
 「カドちゃん。わたしからも、お願い」
 「解りました。もしも、旦那さんがリョウコさんを愛しているのなら、浮気などする筈がありません。全ては誤解だったのです」
 「誤解?」
 「ええ。では、旦那さんが浮気をしていないとすれば、一連の不可解な行動は何の為だったのでしょうか。
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