夜明けのコーヒーには 早すぎる
それは、恐らく結婚記念日の為だと思われます」
 「えっ、どういうことなの?カドカワさん」
 「単純なことです。旦那さんは、去年の結婚記念日を忘れたという負い目がある。とすれば、今年の記念日は必ず祝う筈。それも、リョウコさんを驚かせるような、サプライズパーティーのような形で、ね」
 「あっ、そうか―」ヒロコは手を打つ。「それで、あんな妙な行動を―」
 「そうだと思います」
 「でも、携帯をずっと持っていたのは、何の為?記念日を祝うことと、何か関係が?」
 「勿論です。順に説明しますと、先ず、携帯電話を肌身離さず持ち歩いていたのは、協力者とのメールを、リョウコさんに見られない為です」
 「協力者?」ヒロコは眉根を寄せ、首を傾げる。「一体、誰のこと?」
 「それは、また後で説明します」ぼくはヒロコに微笑む。「次に、旦那さんの服に香水が付いていた件ですが、あれは単に、プレゼントを選んでいたからでしょう。協力者と一緒に、ね」
 「はあ―」リョウコさんは、口を半開きにして頷く。「少し混乱してきた。協力者って、誰?」
 「それは、お土産を頻繁に買ってくるようになった理由を考えれば、判りますよ。
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