夜明けのコーヒーには 早すぎる
あれは、リョウコさんに後ろめたいことがあったのではなく、協力者への賄賂だったのです」
 「賄賂?ということは、その協力者というのはまさか―」
 「はい」ぼくは破顔一笑する。「娘さんのリカさんです」
 「り、リカが?」
 リョウコさんは瞬(しばたた)いている。どうやら、リョウコさんに取っては、かなり意外なことのようだ。
 「そうです。というよりも、他にいません。そして、旦那さんが沢山褒めてきたのは、サプライズの為とはいえ、隠し事をしているという負い目からか、単純に好きなのか、記念日が近付くにつれて去年の罪悪感が甦ってくるからなのか、それとも、色々な感情が入り乱れているのかは判りませんが、とにかくそういうようなことでしょう。最後に、そわそわしていた理由ですが、無論、サプライズパーティーの為でしょう」
 ぼくはそこまで言った後、日本酒を呷った。
 「あの人と、リカが―」
 「しかし、カドちゃん。どうして、娘のリカちゃんが協力してるって判ったの?」
 「確証はありませんが、小学生ながらに、化粧に精通していると聞いていましたから」
 「ああー」ヒロコは大きく頷く。「そうだったそうだった。というか、わたしが教えたんだっけね」
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