夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「そ、それは、何と言うか、ね。少し考えるところがあって―」
 ヒロコはそっぽを向いて、梅酒をチビリ。
 「そうですか。無理に聞き出そうという訳ではありませんが、ぼくに話してくれると嬉しいです。ヒロコが悩んでいるのなら、その悩みを、ぼくに半分貰えませんか?」
 「カドちゃん」ヒロコはゆっくりと嘆息する。「ありがとうね」
 「いいえ」
 「カドちゃんは、全性愛ってどう思う?」
 「パンセクシュアルやオムニセクシュアルと呼ばれる性的指向ですね。確か、男女といった二分法に基づいた性の分類に適合しない人々も含めて、あらゆる人々に恋をしたり、性的願望を抱いたりする人々のことでしたか」
 「うん。少し付け足すなら、あらゆる人々の美的興味を引き付ける可能性を持っている人々のことも指すね」
 「そうでしたね。そして、パンセクシュアルは、性別に囚われず、特定の人間に恋することが出来る者を意味することもありましたね」
 「そうよ。彼等の中には、社会的であれ、生物学的であれ、性というものは意味の無いものであると考える人々もいるしね」
 「成る程。まあ、性別に囚われない彼等には、当然の考え方といえるでしょう」
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