夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「そうね。後、因みに、パンセクシュアルの『パン』は、ギリシア語に由来して、『全て』を意味するらしい」
 「そうだったのですか。成る程なるほど」
 ぼくは梅酒をチビリ。
 「で、どう思う?この考え方」
 「いいと思いますよ。性別に囚われず、個人を好きになるっていうのは、何とも魅力的な言葉ですから。ただ―」
 「ただ、何?」
 「バイセクシュアル―両性愛と混同されがちですがね」
 「確かにそうね。でも、両者には決定的な違いがある」
 「はい。男女両方に懸想するという事で一緒にされがちですが、性別を意識しているバイセクシュアルに比して、パンセクシュアルは性別を意識してませんからね」
 「そういうことね」
 「しかし、何故こんな話を?」
 「それは、多分わたしが全性愛者だから」
 「というと、性に囚われずに、個人を愛する、という意味でですか?」
 「ええ。取り敢えず、わたしたちの間では、パンセクシュアルはその意味で統一しましょうか」
 「解りました。それで、それが悩みなのですか?」
 「いいえ。違うわ」
 「だと思いました。ここからが本題、ですね」
 「うん。その前に、一つ告白」
 「えっ?」
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