夜明けのコーヒーには 早すぎる
 その有無を言わせぬ態度に、釈然としないものを感じつつも、「空いてるけど」とヒロコは答えた。
 「じゃあ、OKね!次の休みの日の12時に、○○○○前に集合ってことで。遅刻厳禁よ」
 Yはそう捲し立てると、電話を切った。
 ヒロコは暫く狐に摘ままれたような顔を晒す。
 「センセーどうしたの?」
 という下校する生徒の声で我に返り、「な、何でもないわよ」と狼狽えながら、ホホホホ~と笑いながら足早にその場を立ち去った。
 ちなみに、今の会話で判るようにヒロコは教師だ。しかも、超が付く程のお嬢様ばかりが通う女子高教諭である。
 が、今回の話にはさして関係がないので悪しからず。

 そして休みの日の当日。
 ヒロコは11時50分に、○○○○前に到着していた。
 Yはまだ来ていない。
 少し早く来過ぎたか。と思いつつ、ヒロコは缶コーヒーを啜りながらYを待った。
 それから10分が経過した。
 Yはまだ来ない。
 遅刻厳禁よ。というYの言葉を思い出し、ヒロコは溜め息を吐いた。
 更に15分が経過した。
 Yはまだ来ない。
 ヒロコは飲み干して空になった缶コーヒーを、握り潰してゴミ箱へ捨てる。缶はスチール製だった。
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