夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「えっ!」ヒロコは、つい素っ頓狂な声を上げてしまう。「どうして知っているのですか!」
 「いや、だからユラくんに聞いたのだと言いましたが―」
 「黙らっしゃい!」ヒロコはぴしゃりと言う。「そんなデリケートな個人的な事を、ユリさんのお姉さんが話すわけありません!」
 「いや、それには色々と事情が―」
 「何が目的ですか!」
 ヒロコは立ち上がり、スイセイに飛び掛かる。
 「わっ、ちょっ、ちょっと落ち着いて下さい」
 スイセイはヒロコと絡み合うも、簡単に押さえつけられてしまう。
 「ユリさんをどうこうしようってんなら、わたしが相手よ!」
 ヒロコはスイセイの手首を捻り上げる。
 「痛たたたたたたたっ!」スイセイは空いている手で畳を叩く。「ギ、ギブです。ギブ!話しを聞いて下さい!暴力反対!助けてー」
 「どう!ユリさんに何もしないと誓う!」
 「誓います!誓いますとも!最初から何もするつもりもありませんよ!」
 「えっ?」
 ヒロコはスイセイを離す。
 「あたっ」
突然離されたスイセイは、バランスを崩して畳に頭を打つ。
 とそこに、「どうかなさいましたか!」騒ぎに気付いた仲居さんが駆けつけてきた。
< 41 / 200 >

この作品をシェア

pagetop