夜明けのコーヒーには 早すぎる
 どうやら、慌てふためくのはスイセイ氏の性分らしい。
 「頭を上げて下さい!ぼくが、もっと巧く話せていれば良かったのですから」
 「いえ、わたしが―」
 と、ヒロコが言おうとするのを、ぼくは制して、「どっちもどっちですね」と、ぴしゃりと言った。
 「それよりも―」ぼくは、ヒロコとスイセイ氏を交互に見やる。「今回の事の経緯を、はっきりとさせておきましょう」
 「は、はい」
ヒロコとスイセイ氏の返事が重なった。
 場は一転、和やかな雰囲気に変わる。どうやら、打ち解けたようだ。
 ぼくは安堵の息を吐いて、口を開く。
 「順を追って、今回の事のあらましを推測しますと、恐らくスイセイ氏は、ヒロコとユリさんの話を聞いた何日か後に、見合いを迫られたのだと思います。スイセイ氏の家庭事情は判りませんが、偽装結婚を考えるということは、カミングアウト出来ない状態なのでしょう。少なくとも、スイセイ氏にはするつもりはない。そこで、見合い相手にヒロコの名前を出してしまったのです」
 「そうなのですか?」
 ヒロコはスイセイ氏に尋ねる。
 「はい。ユラくんに聞いた話だと、同性愛者に非常に理解がある印象を受けたので、もしかしたら、ぼくと同じ悩みを持っているのかも知れない、と」
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