夜明けのコーヒーには 早すぎる
 ぼくが入れ替わりにシャワーを浴びて出てみると、ヒロコはソファの上で俯せで眠っていた。
 慣れない事―見合いをしたので、疲れていたのだろう。
 ぼくは布団をヒロコに被せると、電気を消して寝室に移動する。
 ウォッカと色々なジュースを割りながら、薄塩ポテチを摘まんだ。
 静かな部屋に、ポテチを咀嚼する乾いた音だけが響く。
 中々にシュールな光景だ。
 しかし、そんなことは露程も気にしないぼくは、偽装結婚のことについて思考することにした。

 カミングアウトするしないという問題は、同性愛者間でも意見の分かれるところだろう。
 しかし、それは飽くまで個人の問題であり、カミングアウトを強制することは出来ない。
 だが、カミングアウトをする者が増えることによって、同性愛者を受け入れられる社会を作ることが出来るのも事実。
 微妙な問題である。
 ぼくが聞いた話では、「ゲイ」という言葉は広義では同性愛者全体を指し、狭義では男性同性愛者、更なる狭義ではカミングアウトしている男性同性愛者だけを指すという。
 ぼくが心配なのは、カミングアウトしている者の間で、していない者への差別意識が芽生えないかということだ。
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