夜明けのコーヒーには
早すぎる
セコいと思われるかも知れないが、ぼくは百円玉を追ってしまう。
咄嗟の事につい追いかけてしまったが、後で落ち着いて考えると、人一人がやっと通れる狭く暗い場所で、百円玉一枚を見つけることの無謀さが判る。
全く、我ながら情けない。
結局、ぼくは百円玉を見つけることは出来なかった。
その代わり、百円玉のことなど、一瞬で脳の最果てまでぶっ飛ばしてしまうものを発見してしまうからだ。
最初、ぼくはそれには気付かなかった。
隙間に入って少し奥に進むと、月明かりも遮られて周りは真っ暗だった。
携帯電話の明かりを使おうと、ポケットを弄(まさぐ)っていると―
ズズッ
という何か引き摺る様な音がした。
ぼくは動きを止め、息を殺して奥の方に眼を凝らす。
ズズッ―
また同じ音がした。
眼は一向に慣れてくれない。
ぼくは携帯電話をゆっくりと取り出し、奥に向けて照明ボタンを押した。
携帯電話の明かりで、奥の様子がぼくの眼の前に浮かび上がる。
浮かび上がった光景に、ぼくは思わず息を飲んだ。携帯電話を落としそうになる。
ぼくの眼に飛び込んできたもの、それは人間足だった。
膝が曲がり、両足共くの字になっている。
咄嗟の事につい追いかけてしまったが、後で落ち着いて考えると、人一人がやっと通れる狭く暗い場所で、百円玉一枚を見つけることの無謀さが判る。
全く、我ながら情けない。
結局、ぼくは百円玉を見つけることは出来なかった。
その代わり、百円玉のことなど、一瞬で脳の最果てまでぶっ飛ばしてしまうものを発見してしまうからだ。
最初、ぼくはそれには気付かなかった。
隙間に入って少し奥に進むと、月明かりも遮られて周りは真っ暗だった。
携帯電話の明かりを使おうと、ポケットを弄(まさぐ)っていると―
ズズッ
という何か引き摺る様な音がした。
ぼくは動きを止め、息を殺して奥の方に眼を凝らす。
ズズッ―
また同じ音がした。
眼は一向に慣れてくれない。
ぼくは携帯電話をゆっくりと取り出し、奥に向けて照明ボタンを押した。
携帯電話の明かりで、奥の様子がぼくの眼の前に浮かび上がる。
浮かび上がった光景に、ぼくは思わず息を飲んだ。携帯電話を落としそうになる。
ぼくの眼に飛び込んできたもの、それは人間足だった。
膝が曲がり、両足共くの字になっている。