夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「おれたちも行きますか」
 Tはそう言って二人の後に続く。
 「ええ」と頷いて、ヒロコも続いた。
 ファミレスに入り、皆それぞれの注文を済ますと、ヒロコは暫くTからの質問攻めにあった。
 イチャつきながらも、ヒロコの反応を観察し、時にTと一緒に質問してくるYの態度を見て、ヒロコはYの意図が読めてきた。
 つまりが、ヒロコに男性を紹介しているのだ。
 少々押し付けがましい気もするが、Yの好意からのこととヒロコは解釈して、Tに愛想よくした。
 が、正直、ヒロコはTが少し苦手だった。
 全体的に作り物のような感じがして、気が許せない印象を受けたからだ。
 食事が終わり、ヒロコがコーヒーを啜っていると、Tが今から観る映画の見所など語り出した。
 彼の前には、「おれも好きなんだ」と言って注文したコーヒーが置かれている。
 「この映画は、スタンダードなラブロマンスで―」
 と、何やら訳の解らない飛行機の席のような名前の賞を取ったとか取らないとか、洋食屋のメニューのような脚本家や監督などを、ぺらぺらと湯水が溢れるかの如く語っていく。
 相槌を打ちつつも、ヒロコは内心辟易していた。
 「そろそろ行こうか」
 Kがそう言ったことにより、ヒロコは解放された。
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