夜明けのコーヒーには 早すぎる
 ぼく達が過去の歴史の敗者達を知ること、それがぼく達に出来る全てなのだろう、な。

 ぼくはそんな思考遊戯をしながら、ヒーローアニメを見終えると、軽く欠伸をした。
 「甘いものが欲しいな」
 ぼくはそう呟くと、冷蔵庫からなめらかプリンを取り出し、付属のプラスチックスプーンで掬(すく)って口に運ぶ。
 うん。美味し。
 口に入れた途端にとろける甘いプリンに舌鼓を打ちながら、ぼくは時計に眼をやった。
 午前十時少し前。
どうやら、ロックさんはまだ眠っている様だ。
 少し様子を見てみようかな。
 なめらかプリンを食べ終えたぼくは、ロックさんが眠っている部屋に忍び足で近付く。
 成(な)る可(べ)く音をたてない様に気を付けながらドアノブを回して、ゆっくりと少しだけドアを開いた。
 その間から中を見やるも、暗くてよく見えない。
 人の気配はするが、時々聞こえる寝息以外は静かなものだった。
 過去に、自分の吐瀉物(としゃぶつ)で窒息死するという事件を聞いたことがあるが、その心配もなさそうだ。
 ぼくは軽く肩を竦めると、安心して静かにドアを閉めた。
 来た時と同じく、忍び足でリビングへ戻る。
 「ふぁーあ」
 大きな欠伸が勝手に出てしまう。
 どうやら、予想以上に寝足りないらしい。
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