夜明けのコーヒーには 早すぎる
 ぼくは歯を磨くと、ソファに横になってタオルを2枚重ねてアイマスクの代わりにする。
 脱力して身体を自然に任せると、ぼくの意識は遠くにたゆとっていた。

 ふと、ぼくは物音で眼を覚ました。
 時計に眼をやる。
 午後一時半過ぎだ。
 単純計算で、約3時間眠ったことになる。
 ぼくは物音がする方を見やった。
 ロックさんが眠っている部屋だ。
 起きたのかな?
 と思い、ぼくがソファから立ち上がろうとした瞬間―
 ドンッ
 という鈍い音と共に、「いってぇー!」という、ロックさんの叫び―というより、咆哮に近いものが聞こえてきた。
 ぼくは慌ててソファから飛び起き、ロックさんがいる部屋に駆け付けると、ノックもせずにドアを思いっ切り開け放した。
 薄暗い部屋の中で、ロックさんらしき人影が蹲(うずくま)っているのが見て取れる。
 ぼくは部屋の明かりを点けた。
 部屋が明るくなり、脛を摩りながら蹲(うずくま)るロックさんがはっきりと確認出来た。どうやら、低い机の角で脛を打ったらしい。
 ぼくは思わず顔を顰(しか)めた。
 少なからず同じ経験がある者としては、どれだけ痛いかが良く解る。
 「大丈夫ですか?」
 とぼくが声を掛けると、ロックさんはゆっくりと顔を上げた。
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