夜明けのコーヒーには 早すぎる
 それとも―
 ぼくは思考する。
 ふと、ある可能性が思い浮かんだ。
 ユラさんがユリさんの姉だとしたら、当然ヒロコの事をユリさんから聞いている筈だ。
 前に、ヒロコと見合いをしたスイセイ氏がそう言っていた。
 スイセイ氏が嘘を吐いていないとすると、スイセイ氏とユラさんは交友があり、尚且(なおか)つ互いのセクシュアリティを相談出来る間柄(あいだがら)らしい。
 いや、ユラさんがユリさんの事を話していることから考えて、それ以上と言えるだろう。
 では、二人はどういう関係なのだろうか?
 通常の教師と元教え子よりは深い付き合いだろうが、スイセイ氏のセクシュアリティを考えると男女の関係ではない。
 スイセイ氏は事情があると言っていたが、恐らくは互いのセクシュアリティのことだろう。
 とすると、一つの仮説が浮かんでくる。
 ユラさんは在学中に、自分のセクシュアリティのことで荒れていたのではないだろうか?
 自分は他の人は違うという思いが、他の生徒達との間に壁を作ったのだとしたら。
 自分の価値観が認められず、抹消される恐怖。
 その恐怖を「価値観は人それぞれだ」と笑い飛ばすには、ユラさんは若過ぎたのだろう。
 そんなユラさんを助ける為に、スイセイ氏は自分のセクシュアリティをユラさんに話した。
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