夜明けのコーヒーには 早すぎる
 ユラさんが、ヒロコに会うつもりが無かったのだとしたらどうだろうか。
 しかし、それだと只の自棄酒(やけざけ)になってしまう。
 はたして、そうなのだろうか?
 いや待て―
 ひょっとして、ヒロコに会えるかも知れないという蓋然性に賭けたのではないだろうか。
 そう考えれば、辻褄が合いそうな気がする。
 昨夜、ユラさんは自棄酒(やけざけ)を呑みたくなる様な事があった。
 それで、スイセイ氏に相談しようかどうか迷ったのではないのだろうか?
 悩みに悩んだ末、結局決められなかったユラさんは、ある蓋然性に委(ゆだ)ねることにしたのだろう。
 それがヒロコだったという訳だ。
 ユリさんからかスイセイ氏からかは判らないが、ユラさんはヒロコが「ロンド」で良く呑むことを知っていた。
 ヒロコはユラさんに会ったことが無いという話だったが、ユラさんがヒロコの顔を知る方法はある。ユリさんに写真を見せてもらえばいいだけのことだ。
 そしてヒロコはユラさんの顔を知らない。
 この事が、ユラさんが蓋然性に賭けようと思った一番の理由だったのだろう。
 ヒロコに迷惑を掛けることなく、実行に移せるのだから。
 しかし―
 ぼくはまたまた思考する。
 随分と面倒臭い方法を選んだものだ。
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