夜明けのコーヒーには 早すぎる
 極端な話、コインの裏表で決めてもいい筈なのに。
 もしかしたら、偶然「ロンド」に来たのかも知れない、な。
 ぼくは心の中で一人言ちた。
 つまり、ユラさんは蓋然性に賭けようと思って「ロンド」に来たのではなく、悩んでいる途中に「ロンド」を通り掛かったことにより、蓋然性に賭けてしまったのだろう。
 そしてヒロコが来ないまま、ユラさんは酔い潰れたという訳だ。
 何の因果か、ユラさんはぼくの家にいる。
 はてさて、どうしたものやら。悩める若人の話を聞くべきか、そっとしておくべきか。
 いや待て―
 ぼくは頭を振って、嘆息する。
 うちに居るユラさんが、ユリさんの姉かどうかはまだはっきりしていない。
 仮にお姉さんだったとしても、ぼくの仮説が合っているとは限らない。
 取り敢えず様子見だな。
 ぼくは頷くと、鍋に眼をやった。
 いい感じで沸騰している。
 ぼくは素麺(そうめん)が固まらないように気を付けながら、鍋に入れた。
 箸でかき混ぜながら、水を入れて温度を調節する。
 いい硬さで茹で上がったのを確認すると、笊(ざる)に移してお湯を切り、水で麺を冷やす。
 麺が冷えたのを確認すると、水を切りボウルの上に笊(ざる)を置く。
 最後に、氷を麺の上に飾り付ければ完成だ。
< 67 / 200 >

この作品をシェア

pagetop