夜明けのコーヒーには
早すぎる
映画館に入り、席に着くと、Tは露骨に馴れ馴れしくなってきた。
言葉遣いに到っては、既にファミレスの中でタメ口に変わっていたが、そのことは然して気ならない。同年代ということもあるが、口調をフランクにすることで、初対面の人との距離を縮めようとする人種は決して少ないはないからだ。
それは許せる。だが、ヒロコは必要以上のボディタッチを好きにはなれない。
例えるなら、「何か飲む?」と言いつつ肩に手を回すとか、「あの映画はね―」と予告編を見ながら解説する振りをして、肩を密着させてくる。
という行為である。
その仕草の一つ一つに隠れている下心に、ヒロコはうんざりしていた。
Tに頭突きを食らわし、その場を立ち去りたい欲求を抑えたのは一度や二度ではない。
飽(あ)くまで、Yの顔を立ててのことだった。
然(さ)して好きでもないラブロマンスを、欠伸を漏らしながら見終わる頃には、ヒロコは今日はとことん呑むと決めていた。
「コーヒーでも飲んで、ゆっくりしない?」
Tが皆に提案する。
「いいわね。ねっ?」
Yがヒロコに言った。
内心帰りたい気持ちもあったが、場の雰囲気を崩すのも気が引けたので、「そうね」とヒロコは頷いた。
後で、ヒロコはこのことを死ぬ程後悔することになる。
言葉遣いに到っては、既にファミレスの中でタメ口に変わっていたが、そのことは然して気ならない。同年代ということもあるが、口調をフランクにすることで、初対面の人との距離を縮めようとする人種は決して少ないはないからだ。
それは許せる。だが、ヒロコは必要以上のボディタッチを好きにはなれない。
例えるなら、「何か飲む?」と言いつつ肩に手を回すとか、「あの映画はね―」と予告編を見ながら解説する振りをして、肩を密着させてくる。
という行為である。
その仕草の一つ一つに隠れている下心に、ヒロコはうんざりしていた。
Tに頭突きを食らわし、その場を立ち去りたい欲求を抑えたのは一度や二度ではない。
飽(あ)くまで、Yの顔を立ててのことだった。
然(さ)して好きでもないラブロマンスを、欠伸を漏らしながら見終わる頃には、ヒロコは今日はとことん呑むと決めていた。
「コーヒーでも飲んで、ゆっくりしない?」
Tが皆に提案する。
「いいわね。ねっ?」
Yがヒロコに言った。
内心帰りたい気持ちもあったが、場の雰囲気を崩すのも気が引けたので、「そうね」とヒロコは頷いた。
後で、ヒロコはこのことを死ぬ程後悔することになる。