夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「ええ」ぼくは頷く。「ですから、是非ご一緒に」
 「でも、何故わたしと?」
 ユラさんは眉間に皺を寄せたまま、首を傾げた。
 「これも何かの縁、ヒロコも二人より三人の方が楽しいと言っていますから」
 「ヒロコ―」ユラさんの眼が少し見開く。「さんですか」
 「ヒロコを知っているのですか?」
 「いえ。只、知り合いに同じ名前がいるだけです。因(ちな)みに、ヒロコさんの名字は?」
 「カトウですが」
 それを聞いたユラさんは、少し逡巡した後、「ご一緒させていただきます」と言った。
 どうやら、少なくともヒロコを知っている様子だ。
 とすると、ユリさんの姉の可能性が増してくる。
 「では、夕方に『ロンド』で」
 ぼくがそう言うと、ユラさんは頷き、「ありがとうございました」と礼を言って帰っていった。
 ぼくはユラさんを見送ると、大きな欠伸を一つした。
 「ふぁーあ」
 自然に声が出てしまう。
 ぼくは、夕方まで眠ることにした。
 思ってみれば、今日は寝不足だったのだ。
 ぼくは部屋に入り、明かりを消して布団に潜り込む。
 真っ暗な部屋の中、ぼくの意識は暗闇に飲まれていった。

 眼を覚ますと、ぼくは携帯電話で時間を確認した。
 午後6時過ぎ。
 良い時間だ。
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