夜明けのコーヒーには 早すぎる
 ぼくは簡単に身支度を済ますと、家を出て「ロンド」に赴く。
 「ロンド」に入ると、既にヒロコは奥の座敷にどっしりと構えていた。
 店を見回す限り、ユラさんはまだみたいだ。
 座敷に上がり、ヒロコの前に腰を下ろして日本酒を注文する。
 「昨夜は来ませんでしたね」
 「うん。仕事の呑み会があってね」
 「成る程。納得です」
 ぼくは届いた日本酒をお猪口に注ぎ、軽く掲げる。
 ヒロコもジョッキを掲げた。
 「乾杯」
 ぼくとヒロコは、軽くお猪口とジョッキを当てた。
 小気味良い音が響き、酒を美味くする。
 ぼくは冷奴を摘まみながら、日本酒を呑んだ。
 一方、ヒロコはビールを呷りながら、焼き鳥を頬張っている。
 ぼくとヒロコが次の摘まみを注文しようとした時、「ロンド」にユラさんが入ってきた。
 ぼくは右手を挙げて、手招きをする。
 「ん?誰?」
 ヒロコは首を傾げて、ぼくに尋ねた。
 「カトリユラさんです」
 ぼくは、やって来たユラさんをヒロコに紹介してから、「こちらは、カトウヒロコです」と、今度はユラさんにヒロコを紹介した。
 「初めまして、カトリユラです」
 ユラさんは頭を下げる。
 「こちらこそ初めまして、カトウヒロコです」
 ヒロコもつられて、会釈を返した。
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