夜明けのコーヒーには 早すぎる
 実を言うと、身体の節々が痛い。
 日頃の運動不足が祟った様だ。
 「そういえば―」ヒロコは、だし巻き玉子をおろし醤油に浸けて口に放り込む。「はふいはふい」
 どうやら、「熱いあつい」と言ってる様だ。
 ヒロコはビールで、だし巻き玉子を流し込んだ。
 「そういえば、何ですか?」
 「ん?そうそう。そういえば、スイセイさんも来るって言ってたよ」
 「先生が?」
 ユラさんは、眼に見えて明るくなる。
 どうやら、スイセイ氏への信頼は厚い様だ。
 「うんうん。今日は大勢で呑めそうだ」
 ヒロコはほくほく顔をしている。
 ぼくも内心、楽しみになってきた。
 もしかしたら、気になっていた事が判るかも知れないからだ。
 暫く三人で呑んでいると、スイセイ氏が「ロンド」にやって来た。
 ぼく達を認め、座敷席にやって来たスイセイ氏は、ユラさんを見やると、「どうして、ユラくんが此処(ここ)に?」と言って首を傾げた。
 「ままっ、とにかく座ってすわって」
 とヒロコが、スイセイ氏を自分の隣りに座らせる。
 「実は―」
 と事の経緯を話そうとして、ヒロコはユラさんを見やる。
 ユラさんは頷いて、了承の意を示した。
 ヒロコが昨夜の事を話し終えると、スイセイ氏はユラさんに向き直る。
< 74 / 200 >

この作品をシェア

pagetop