夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「それで相談の内容なのですが―」ユリさんは再び、声を潜める。「わたしの友人―ここでは仮にマルさんとしておきますが、このマルさんには付き合って一年半の彼氏がいます。この彼氏―仮にバツくんとしまして、何とバツくん、付き合って一年半も経つというのに、接吻はおろか手すらも自ずから繋がないとのことらしいのです」
 「成る程。通常の十代男子から比すれば、異常とも思える事態ですね」
 「そうなのです!マルさんの悩みもそこにありましてですね、バツくんが本当に自分を好いてくれているか判らないということなんですよ」
 ユリさんはミルクティーを飲み終えると、アイスコーヒーを追加した。
 まあ、あれだけ喋れば喉も渇くというものだ。
 「成る程。話は解りました」
 ぼくはアイスコーヒーを啜る。
 「どう思いますか?」
 「そうですねー」ぼくは腕を組む。「どんな可能性があるか、出し合っていきましょうか。そうすれば、何か判るかも知れません」
 「それもそうですね」ユリさんは頷く。「少し、考えてみます」
 ユリさんは、腕を組みながら頬を擦る。
 中尾彬の様な仕草だが、ザ・大和撫子といった感じのユリさんがすると、どこが優雅さを感じさせるから不思議だ。
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