夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「ほうほう」
 ユリさんは、得心した様に頷く。
 「ですから、マルさんがバツくんに好意をアピールするか、若(も)しくは、マルさんの方から積極的に、バツくんに迫るのが手っ取り早いと思います」
 「成る程。欲しければ、掴み取れってことですね」
 ユリさんは破顔一笑して、アイスコーヒーを啜った。
 ぼくはアイスコーヒーを飲み終え、抹茶パフェを注文する。
 すると、触発されたのか、ユリさんもチョコパフェを注文した。
 どうやら、思っていたよりも長丁場になりそうだ。
 ユリさんは、チョコパフェに刺さっているポッキーを、リスの様に齧ると、「ところで、カドカワさん」と言って、ぼくを見やった。
 「はい。何でしょう?」
 ぼくは、抹茶パフェを食べる手を止めて答える。
 「もし、バツくんが奥手ではなかった場合はどうでしょうか?」
 「というと?」
 「考えたんですが、バツくんがマルさんに手を出さないのは、単に興味がないだけなのではないでしょうか」
 「それも有り得ますね」ぼくは抹茶パフェの抹茶アイスを、スプーンで掬(すく)う。「ということは、バツくんは何か目的が在って、マルさんと付き合っていると考えられますね」
 ぼくは抹茶アイスを口に運び、舌鼓を打った。
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