夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「うーん。どういうことでしょうか?」
 「そうですね。もう一つ考えつくことといえば―」ぼくは一旦言葉を区切り、溶けてきたパフェをかき混ぜる。「見栄、ですかね」
 「見栄?」
 「そうです。見栄です。高校生にもなって、彼女の一人もいないなんて恰好が悪い。ということです」
 「なっ―」ユリさんは、呆れ顔で固まる。「何ですか?それは」
 「その反応はごもっとも。しかし、バツくんにとって彼女という存在が、アクセサリー程度のものだとしたら?」
 「そうか!」ユリさんは大きく頷く。「付き合っているのに、手を出さない説明になりますね」
 「呆れた理由ですが、見栄を気にする人にとっては充分な理由なのかも知れませんね」
 「だとしたら、マルさんにはとても言えませんね」
 「言う必要はありません。ユリさんが、それとなく諭して上げればいいのです」
 「そうですね。しかし―」
 ユリさんは、何やら腑に落ちない様子。
 「どうしました?」
 「いえ、大したことはないのですが、例え形だけの彼女だとしても、やりたい盛りの男子高校生が何もしないというのが引っ掛かりまして」
 やりたい盛り―言葉は合っているけど、ユリさんが言うと違和感があり過ぎて、まるで違う意味がありそうだ。
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