あたし、猫かぶってます。


 奏多はモテる。あたしだってモテるけど、それは猫かぶっているから。奏多は素でモテる。


 「奏多くん?!なんで…」

 女子の焦った声。そりゃあ焦るよね。この中には奏多に恋してる人だって居るんだもん。


 「じゃあ、君達はなんで結衣をいじめているの?」

 口調はゆるくなったけど、目が笑ってない。


 「あ…っ、」

 急に弱くなる女子達。弱くなるくらいならやるなっつーの。奏多に猫かぶったって、奏多が騙されてくれるはず無い。

 「結衣に謝れよ。つか、こういうの俺にやれば?」

 不可抗力とはいえ、あたしが悪いのに。奏多は本当に優しい。バカ。


 気付いたら、女子達はバタバタと逃げていて、資料室にはあたしと奏多の2人っきり。


 「結衣。」

 怒っているような気がして、ギュッと目を瞑る。

 ーーーフワッ


 「遅くなって、ごめん。」

 ヤバい、涙止まらない。


 奏多が、誰よりも優しい奏多が。ーー好きなんだ。


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