あたし、猫かぶってます。


 「ここか?」

 そう言いながら一箇所ずつ細かく探る矢口。バレる可能性大だけど、時間は稼げている。


 もう10分は経っただろう。きっともうすぐで奏多や早瀬が体育館に来てくれる。そう思い、ホッと息を漏らした、瞬間。


 「結衣みーっけ。」

 笑顔の矢口があたしを見る。


 跳び箱の中からあたしを抱き上げて出して、マットの上にそっと降ろす。

 「先生は、あたしのこと好きなんですか?」

 時間稼ぎ、そう思ったあたしは、矢口に話しかける。


 「大好きだよ。賢くて可愛くて、なんでも言うこと聞いてくれて。ーーー大体の生徒は、俺から誘えば堕ちるのに。結衣は手強いな。」

 そう言いながら、あたしの上に馬乗りになる。


 「っ!」

 最低。お前なんか、絶対好きになんないし。

 言いたいのに、恐怖の方が勝ってなにも言えない。腕が動かない。勝てない。こわい。


 不審者を見たら、大声で助けを呼びましょう。なんて、実際出来るわけ無い。


 「俺はお前の進路も握ってるからな。逆らえないだろ?ーーー大人しくしてろよ。すぐ終わるから。」

 そう言って、あたしに顔を近付ける。涙で歪む、視界。


 ばかばかばか。奏多、早瀬。早く来てよ。ピンチの時はヒーローが助けてくれるんじゃないの?

 あたしは最後の力を振り絞って叫んで、蹴った。


 「かなたっ!!はやせ…!!」

 ーーーカシャッ 

 シャッター音が、聞こえた。





 「んな、デカい声で呼ばなくても最初から居たっつーの。」

 「俺らはこれを撮りたかったくて、チャンスを狙ってたんだよね。」


 「「さ、どうする?カス矢口。 」」 

 携帯を持ちながらニヤリと笑う、奏多と早瀬。あたしが思い切り蹴った男の急所を隠しながら顔を歪める矢口。反撃開始しようとしていたあたし。

 4人の共通点は、早瀬結衣が好き。


 てか、カス矢口って。ナイスネーミング。


 ※4人=結衣、奏多、早瀬、矢口です!自分大好きなナルシスト結衣ちゃんです`・ω・´☆説明不足すいません!!


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