あたし、猫かぶってます。
俺、ヘタレ男子なんです。


 「俺、結衣のこと好きだわ。」

 親友の麻紘が、照れながら俺にそう告げる。


 「由真と別れてから告白するつもり。」


 「…頑張れよ。」

 今でも、この時の胸の痛さを覚えている。幼なじみの結衣と親友の麻紘。大好きな2人が付き合えば嬉しいはずなのに、切なくてたまらなかった。


 あぁ、俺も結衣がすきだったんだ。

 いじめられて、裏切られて、無視されても、人前では絶対泣かなかった結衣が、ブレスレットを壊されて泣いた日。やっと全部理解した。


 みんなは猫かぶってる可愛い結衣が好きだけど、俺の場合は好きになった結衣が可愛かっただけの話。顔とか、性格じゃない何かが、俺を動かしたんだと思う。


 俺が、結衣を幸せにしてあげたい。

 結衣の一番は確実に俺だと思う。俺の一番は言うまでもなく結衣だし、これからも一番近くに居て、結衣を守りたいと思っていた。のに、


 ーーー「早瀬にまたテスト負けた。」

 高一の期末テスト。悔しそうな顔をした結衣が、俺の部屋でテストの答案用紙を広げていた。


 「早瀬?」


 「同じクラスの男子。顔良くて頭良いとか、絶対性格悪いよ、あいつ。」

 結衣が麻紘以外の男子の名前を出すのは高校生になってから初めてだったから。正直、かなり動揺したのを覚えている。


 それにしても早瀬くんみたいなチャラチャラしている人に興味持つなんて、全く予想外なんだけど。


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