あたし、猫かぶってます。


 結衣はワガママだけど、変なところに気を遣う。

 親にも、俺にもワガママ言うくせに肝心なところではいつも頼ってくれない。誰なら結衣は心を開くんだろう。俺じゃダメなのかな。


 そう思いながら、抱きしめる。離したくないし、今離しちゃダメな気がする。

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 結衣の話を聞いて、何も出来ない自分にムカついた。幼なじみで、一番結衣の近くに居たと思っていたけれど、いざというとき俺は無力だ。

 「ごめん、」

 謝ったって解決しないのは分かってる。けど、結衣の悲しそうな顔を見るのは、もう嫌だ。


 泣きそうな結衣を心配してくれた早瀬くんは本当に良い人なのかもしれないけれど、その早瀬くんにさえ、嫉妬してる自分が居る。


 悔しいけど、カッコイイ。早瀬くんはそうやってドンドン結衣の心を開いているのに、幼なじみの俺は結衣に何も近付けていないような気がした。


 好きな女の子を守れる人になりたい。俺は結衣が全てだし、結衣が居れば他の女子なんてどうでもいい。

 いくら結衣に構っているとは言え、早瀬くんは彼女居るって噂聞いていたしーー

 あんま、カッコイイところ見せないで欲しいのが本音だったりする。これ以上、結衣と仲良くならないで欲しいなんて考える俺は、最低なのかもしれない。


 結衣、ごめん。でも、好きなんだ。


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