あたし、猫かぶってます。
思えば、中学校は毎年インフルエンザにかかっていたな。
三年生の時は、確か受験の二週間前くらいで。新入生代表挨拶を狙っていたあたしは、インフルエンザにも関わらず、家でずっと勉強をしていた。
ママやパパ、奏多にはたくさん心配かけちゃったし、インフルエンザになると必ずゼリー持ってお見舞いに来てくれた由真は来なかったし。
来ないとは思っていたけど、どこかで期待していて、仲直りのセリフ考えていたな。確かあの時も、今みたいに1人だったな。ーーお見舞いに来なかった由真と早瀬が、重なっちゃう。
しかも。あんなに頑張ったのに、新入生代表挨拶は早瀬だったし。
「ーーー…い、結衣?」
早瀬のこと考え過ぎて、早瀬の声聞こえちゃうし。
あたし、どんだけ早瀬に来て欲しかったの。まるで構ってちゃんみたいでなんかやだな。
「ーーー結衣!!」
今度はハッキリ聞こえた、早瀬の声。目を開けると、不安そうにあたしを見る早瀬が居て。なんか、泣きそうになった。
「…遅くなって、ごめん。」
遅いって責めようとしたけど、すごく心配そうな表情の早瀬を見たら、何も言えなくて。
ーーーギュッ
気付いたら、気持ちより、言葉より、体が先に動いていた。
「え、結衣?」
焦る早瀬。当たり前だよね。いきなり抱きつくとか、焦るよね。自分でも、なんでこんな気持ちになるのか分からないけどーーすごく、寂しかった。
「寂しかった。」
言葉にしたらポロリと涙が出た。
そんなあたしの後頭部を、早瀬はただ黙って撫でてくれて。わかんないけど、すごく安心した。