あたし、猫かぶってます。
「ごめん、本当にごめんな?」
優しい早瀬の声。涙がボロボロ出てくる。泣き顔ってあんま可愛くないのに、なかなか止まってくれない。
「プリン、なに買っていいか分かんなかったから全種類買ってきた。ほら、食べる?それとも、部屋行く?」
困りながらも、あたしの涙を優しく拭いながら落ち着かせようとする早瀬。気持ち悪いくらい、優しい。
頭痛い、ズキズキする。それは多分、インフルエンザだから。胸も痛い、チクチクする。ーーーこれはなんで?
「早瀬、帰る?」
帰って欲しくない。これからはこんなこと言わないし、1人で留守番だってするから、あたしが寝るまででいいから、近くに居て欲しい。
「…帰んねぇから、ゴチャゴチャ考えないで休め?」
少し困ったように笑った早瀬が、あたしの頭をポンポンと叩く。
ーーー早瀬に言われた通り、部屋に戻ってベッドに入り、ちゃんと布団をかぶって、目を閉じた。
早瀬は隣に椅子を持ってきて、あたしは早瀬の手を両手でしっかり握っていた。早瀬の手は冷たくて、気持ちよくて、安心できて。あたしはすぐに眠ることができた。
「ーーー結衣、好きだよ。 」
早瀬がどういう気持ちでこの言葉を言ったのか、早瀬がどんな顔をしていたのかなんて、眠っているあたしは知るよしも無かった。