あたし、猫かぶってます。


 「おはよう。」

 約一週間ぶりの学校。そして今日はテスト初日。昨日は日中にたくさん勉強して、珍しく日付が変わる前に寝た。


 体調管理しっかりしないと、また早瀬に怒られるし、なによりテストで早瀬に勝てないのはイヤだし。



 「早瀬ちゃん、久しぶり!」

 あたしを見るなり笑顔で挨拶して来る男子。あたしは得意の結衣ちゃんスマイル。どうせつまんない口説き文句しか言わないんだろうな、なんて思いながら男子を見ると、


 「テスト、朔くんに勝てるといいね!」


 ニコニコしながら、そう言って去ってゆく男子。



 え、それだけ?って拍子抜けなあたし。もっと「寂しかった」とか、そういう感じの付き合ってもいないのに彼氏気取ったセリフを吐かれると思いきや、


 嬉しい応援だけだった。




 「結衣、来てる!?」

 そして、知奈ちゃんが登校して来て、一週間ぶりにお喋りをした。もちろんテキスト広げながらだけど。


 「あれ、…早瀬は?」

 カバンはあるし、来た様子はあるのに、肝心の本人が居ない。


 「どこ行ったんだろ。」

 知奈ちゃんも知らない様子で、2人で首を傾げたけれど、そのうち来るだろうと、ひとまず放置して勉強。




 ーーーーキンコーンカーン、


 チャイムが鳴って、みんなが席に着き始めた時。




 「結衣、来てんの!?」

 知奈ちゃんと似たようなセリフを言いながら、教室へ入ってくる早瀬。


 「どこ行ってたの?」

 あたしがそう聞けば、一瞬躊躇ったような顔をして、口を開いた。



 「下駄箱。」


 「…なんで下駄箱?」

 意味が分からなくて、早瀬に聞くと、




 「結衣のこと待ってたんだよ、悪いか。」

 そう言って、ガバッと机に伏せる早瀬。来る途中、職員室に寄ったから、早瀬に気付かなかったんだなぁ、あたし。


 「早瀬、」


 「うっせ、喋んな。黙って勉強してろ。」

 なんて言うくせに、耳まで真っ赤なんだけど。


 …かわいい。


< 128 / 282 >

この作品をシェア

pagetop