あたし、猫かぶってます。
それから、4日間のテスト地獄。最初こそ余裕だったものの、テストが始まってからはほとんど寝ていなかった。
そんなテストも、やっと終わった。
「結衣、今日カラオケ行くー?」
笑顔であたしの元へ駆けてくる知奈ちゃん。めちゃくちゃ可愛いんだけど、どうしよう。
「あ、いいね。行く行く。」
知奈ちゃんに笑いかけて、鞄を持つ腕をーーー
「ちょっと待て。」
真剣な表情の早瀬がグッと掴む。
「…早瀬?」
テストが終わったし、別に良くない?なんて思いながら、早瀬があたしの腕を掴む理由を考える。ーーーあ。
「お前、徹夜しすぎ。帰って寝ろよ。」
やっぱり。早瀬は本当に、あたしのことを分かっているみたいだ。
「え、結衣具合悪い?!ごめん…っ!」
申し訳なさそうな表情の知奈ちゃん。いやいや、寝不足なだけなのに!
「…知奈ちゃん、あたし別にーーー」
大丈夫、そう言おうとした時、
「ごめん。斎藤さん、」
後ろから、優しい声が被さり、早瀬に掴まれている腕に、違う誰かの手が触れる。
「今日は、結衣と2人帰りたいんだ。譲ってくれない?」
久しぶりに聞いた声。久しぶりに見た優しい表情。久しぶりに高鳴る、胸。
「奏多…、」
久しぶりに奏多に会えて嬉しいはずなのに、奏多の表情は笑っているのにどこか違和感があって。直感で分かった。
…奏多、怒ってる?なんで?