あたし、猫かぶってます。
早瀬朔。通称クソ早瀬。って言ってもあたしの心の中でしか呼ばれていないけどね。
「てか、こいつと同じ苗字とか。いつ聞いても不愉快。」
あたしもだっつーの!!…言わないけど。
なんかの映画でやっていた、名前を書いたら死んじゃうノートがあったら、全部のページにクソ早瀬って書いてやる。いや、まじで。
あ、でもあたしも早瀬だから、ちゃんとフルネームで書かなきゃあたしも死ぬじゃん。
そんなことを考えながら、クソ早瀬を見る。
クソ早瀬は、カッコいい。奏多に比べたら蟻と宇宙みたいな差だけど、普通にカッコいい。性格は不細工そのものだけど。
「早瀬くんはなんで結衣のこと嫌うの?」
自分でも笑えるくらいキャピキャピした声で、ちょっと悲しそうな表情を作ってクソ早瀬を見る。
「は?嫌いだから。」
会話が成り立っていないんですけど。
「てか、アンタ普段はそんな気持ち悪い喋り方じゃないでしょ。」
耳元で、小さく言われた言葉。
早瀬を見ると、勝ち誇ったような笑顔で笑っていて、多少…いや。かなりムカついた。