あたし、猫かぶってます。
ヴー、ヴー、ヴー、ーーーーー…
しばらくして、バイブ音は鳴り止む。ホッと胸を撫で下ろす。無視したんじゃない、あたしは電話に間に合わなかったんだ、うん。
自分に言い訳なんて、なんてバカバカしいんだろう。出たくないから出なかった、ただそれだけなのに。
ーーーピンポーン
気分転換にアイスクリーム・ラブという漫画を見ていたら、チャイムが鳴った。出る気分じゃなかったけど、ママ居ないし、仕方ないから出てあげよう。
宅配便?集金?…来るなら今日じゃなくして欲しかったな。あたしも、忙しいんだよ?
にしても、アイスクリーム・ラブの結衣はどっちとくっつくのだろう。俺様だけどたまに優しい篠原?チキンだけど優しいな裕也?
なんか、早瀬と奏多と重なる。
ーーーピンポーン
再び鳴るチャイム。
「はーい、」
…しつこい。短気な人だなぁ。今階段下がっているんだから、ちょっと待ってよ。
とか思いつつ、急いで降りたりはしない。
「結衣さん、居ますか。」
ドアを開けようとしていたあたしの手が、ピタリと止まる。
ヤバい、なんで?ーーー早瀬だ。
「結衣さんは居ません。」
自分でも無駄なことだと思うけど、とっさにそう言って、ドアの鍵を閉める。
「結衣、なんで電話ムシすんの?」
「だから、結衣さんはーーー」
「じゃあ、ドアの前に居るのは誰なんだよ?」
ヤバい。早瀬にバレてる。…どうしよう。