あたし、猫かぶってます。
「やっと付き合ったか。」
笑顔で、あたしにそう言う早瀬。
ーーー傷付けた。あたしが早瀬を傷付けたんだ。
「よかったじゃん。」
そんな風に笑わないで、なんて今のあたしに言う権利も無くて、グッと唇を噛みしめる。
「…んな顔、すんなよ。」
早瀬の気持ちには答えられないし、だからと言って早瀬が離れていくのも嫌だ。あたしのそんなワガママな気持ちが、奏多だけじゃなく早瀬まで傷付けている。
奏多と早瀬、どっちかを選ぶなんて結局あたしにはできなくて、フラフラしているからどっちも傷付ける。
「ごめん、」
大好きな奏多とやっと付き合えたのに素直に喜べないあたし、早瀬が傷付けているのに自分だけ幸せになるあたし。ーーどっちも、ムカつく。
「てか、最初から結衣イマイチ俺のタイプじゃなかったし。」
「可愛いけど、めちゃくちゃ口悪いし。」
笑顔だった早瀬の表情が切なく歪んでいくーー
「俺より頭良くないしーーーー」
痛い。
めちゃくちゃ痛い。大切な人を傷付けるのって、こんなに痛かったんだ。初めて知ったよ。あたし、まともな友達居なかったし。
「早瀬、ごめーーー「…っ、謝るんなら!!」
あたしの声を遮って、早瀬は声を張る。
「謝るんなら、俺と付き合えよ…っ、!!謝罪も優しさもいらない。だから、付き合えよ…。」
早瀬の切ない表情が、言葉が、あたしの胸に痛いくらいに響いた。