あたし、猫かぶってます。


 それから冬休みに入って、結衣と会わなくなったのに、俺の気持ちは相変わらずで。気付けばいつも結衣を考えていた。


 「別れて。」

 結衣を想ったまま棗と付き合えない。そう思った俺は、棗の家へ行って別れを告げた。


 自己中とか、ひどい男って思われても、他に好きな奴が居るくせに二股まがいのことをするような奴よりは、マシだろ。なんて開き直って、俺は俺なりにケジメをつけた。

 「やだ。」


 けど、棗は俺の話を聞き入れてくれずにーー冬休みが明けた。





 結衣を好きになったと言えば、棗は結衣に話すだろう。俺の気持ちを知られれば、結衣に避けられるのは目に見えている。それは、嫌だった。


 告白するつもりは無かったし、まずは棗と別れてから、じっくりアタックするつもりだったのに。


 「早瀬は他の男子みたいに、あたしが可愛いから助けてくれたの?」

 ある日の放課後、いつもみたいに4人で話していたら、結衣と口喧嘩になりーーこんなことを言われた。


 そして、ムカついた俺は、結衣を連れ出して。ついに言わないと決めていたことを口に出してしまった。


 「ーーーー俺は結衣が好きだ。」

 挙げ句の果てにキスなんかして。結衣に最低だと言われて、ハッとした。


 やべ。理性飛んでキスしちゃったし。

 後悔はしてないけど、これでも反省はしたつもり。でも、俺の気持ちを伝えたって結衣は信じようとしないし。

 奏多、奏多ってうるさい結衣の口を塞ぎたかったんだ。


< 146 / 282 >

この作品をシェア

pagetop