あたし、猫かぶってます。


 それから遼くんに電話して、矢口のことを聞き出してーー体育館倉庫へと、向かう。







 録音も、写真もバッチリ準備したし、遼くんの協力を借りたから、もう言い逃れだってできないはずだ。

 矢口は自分がやったことを認めて、結衣に謝ると思っていた。けど、


 「校長には黙っていてくれーー!!」

 必死な顔で、結衣に謝ることなく自分の立場を守ることを選んだ矢口。結衣には謝らないくせに、ペコペコと俺に頭を下げる矢口に、めちゃくちゃムカついた。


 奏多には、殴るなよとか言ったけれど、結衣を犯そうとしたくせに、全く反省した様子を見せない矢口が許せなかった。



 ーーーガンッ

 倉庫のドアを、蹴る。


 「結衣に謝れよっ!!!」


 どうして、みんな早瀬結衣を大切にしないんだよ。


 矢口も、昔結衣をはぶいていた奴も、全部諦めたようなことを言って期待してる結衣本人も。ーーなんでみんな、結衣を傷付けんだよ。

 結衣は、誰よりもワガママで傷付きやすいから。もっとちゃんと大切にしてやらなきゃいけないのに。どいつもこいつも結衣を泣かせてばっかだ。


 ーーーなら、俺が幸せにする。

 奏多と結衣が両想いなのは理解したけど、俺はきっと奏多より結衣を幸せにできる。


 俺なら、結衣を泣かせない。




 今まで奏多から結衣を奪う気なんてほとんど無かったけど、俺はこの時初めて、結衣が欲しいと、結衣を奪いたいと思った。


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