あたし、猫かぶってます。


 「早瀬はさ、愛想振りまいてまで周りを大切にしているような偽善者には見えないんだけど。」

 言ってる事の意味が分からない。


 「早瀬くん、何言ってーー」

 「お前、俺のこと大嫌いでしょ。」

 疑問というよりは、確信していたことを事実にするかのように、決めつけたような言い方。


 「早瀬くん、いきなりどうしたの?」

 「俺はお前が大嫌い。そうやって全て上手くいくと思ってるわけ?」

 なんも知らないくせに。上手くいくと思ってやっているわけじゃない。あたしがみんなに愛される方法は、これしかないんだよ。


 「早瀬くんは、いいよね!!」

 声を荒げるなんて、バカみたい。知っているけど。

 「早瀬くんは、周りに最初から認められているけど、あたしは違う。周りに愛想振りまいて、初めてあたしって存在が認められる。」


 “結衣に男取られたー”

 “結衣ってブリッコだよね”

 思い出したくない過去が大嫌いな早瀬によってフラッシュバックされる。

 「結衣は、みんなに好かれたいだけなんだ?」


 「悪い!?」

 さりげなく結衣とか呼ばないでよ。なんて思いながら早瀬を見たら、


 「なんか、可愛いわ。」

 早瀬は笑っていて、一瞬だけ、本当にちょっとだけ、ドキッとしてしまった。


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