あたし、猫かぶってます。
一度そう思い出したら、制御なんて利かなくなって。バカみたいに結衣の近くに居たし、結衣に触れた。
嫌だと言いながらも、奏多と付き合っていない状況の結衣を、困らせると分かっていて振り回したとも言える俺の行為。
毎日が幸せだった。ずっとこんな毎日が続いて、いつかは俺を見てくる日も来るんだと思っていた。
けど、テスト明けの最終日。奏多が無理やり結衣を引っ張って帰る姿にーー嫌な予感がした。
俺の嫌な勘は、大体当たってしまうから。結衣の家へ行こうと決め、結衣に電話した。
「…出ねぇ。」
奏多と何かあったのか、心配になった俺は結衣の家へ急いだ。
ーーーーピンポーン、
なかなか出てこない結衣に、イライラしながらも、二回もチャイムを鳴らした。電話出ねぇし、何やってんだよ。
「はーい、」
そう返事をするのは、間違い無く結衣なのに。
「結衣さん、居ますか?」
俺が口を開いた途端、ガラス越しに結衣の動きが止まったのが分かった。
「結衣は、居ません。」
なんて分かりやすい嘘ついて。動揺している結衣に、胸がざわつく。
やっぱり俺の悪い勘は当たるらしい。
だって。夕方までは、普通にしていたのに、普通の結衣だったのに。
「…今日から、奏多と付き合うことになったから。」
結衣が震えた声でこんなこと言い出すなんて、おかしいだろ?ーーー奏多と結衣に、何があったんだよ。